とはいえ、まだ効果的な定番の相続対策もある。一つは、受贈者1人につき年間110万円まで非課税となる暦年贈与。孫子3人に10年間、110万円ずつ贈与し続ければ、原則、3千万円以上を無税で譲り渡すことが可能だ。今後の税制改正で非課税枠が縮小されたりする可能性もあるが、今のうちに始めたい対策の一つだ。

 23年3月末をもって廃止される見込みの教育資金贈与の特例制度(受贈者1人あたり1500万円まで非課税)や結婚子育て資金贈与の特例制度(同1千万円まで)も有効な対策だ。今から非課税枠いっぱいまで活用するのは難しいが、教育や結婚・子育て費用の需要があるのならば、同制度を利用して少しでも贈与しておきたい。

 一方、今後の税制改正後も変わらずに活用できると思われるのは、生命保険。500万円×法定相続人が非課税となるため、まとまった現金があるのならば、準備しておきたい。同様に、不動産を利用した対策も一般的だ。現金を不動産に替えるだけで評価額が7割程度に引き下げられるうえに、賃貸物件であれば借地権・借家権が差し引かれ、さらに2~3割評価額を引き下げられる。

 2千万円で購入し、賃貸していたワンルームマンションならば評価額は500万~600万円に下がり、贈与したところで贈与税は70万~90万円に抑えられる。

 親子共有財産として自宅や賃貸マンションなどの不動産を保有している場合は、相続発生前に親に子の保有分を買い取ってもらったほうがいいというケースもある。

「現預金を不動産に替えれば相続財産全体の評価額を下げることができるうえに、親子が同居している自宅の場合には小規模宅地等の特例で土地の評価額を330平方メートルまで80%減額できます。そのため、子の保有分を親に買い取ってもらうという相続対策が有効になることも。子は現金を受け取ることができて、相続発生時にも大きな納税負担を負うことなく宅地を相続することができます」(税理士法人チェスター・河合厚税理士)

次のページ