加賀まりこさん(左)と林真理子さん [撮影/小山幸佑、ヘアメイク/野村博史、スタイリスト/飯田聡子、衣装協力/KEI Hayama PLUS]
加賀まりこさん(左)と林真理子さん [撮影/小山幸佑、ヘアメイク/野村博史、スタイリスト/飯田聡子、衣装協力/KEI Hayama PLUS]

 自閉症の息子を持つ占師を演じる、54年ぶりの主演映画「梅切らぬバカ」(監督・脚本:和島香太郎)の公開が今月12日に控える加賀まりこさん。作家・林真理子さんとの対談では、今作に出演した理由からデビュー秘話まで語ってもらいました。

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加賀まりこ 共演のドランク・塚地武雅を「うまい、あの方」と評す】より続く

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林:和島監督は、この作品、どこか海外の映画祭にお出しになるつもりなんですか。

加賀:さあ、どうでしょう。

林:大仰な作品じゃなくて、今の日本の日常を描いているわけですから、こういう映画こそ、どこかの映画祭に出してほしいですよね。

加賀:そうね。これは文化庁の事業で、プロのスタッフとプロの役者が若い映画監督を育てるという作品(文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」)なのね。予算も多くないのよ。私たちのギャラも通常の半分以下ですもん。

林:制作費が少なくてもこんないい映画がつくれるんですね。この監督さん、これからもっと活躍しそうな気がします。

加賀:この対談に出てこられるぐらい頑張ってほしいですよね。

林:そうですね、なんてエラそうですけど(笑)。でも、よく加賀さんみたいな方が、若い監督の地味な作品にお出になりましたよね。

加賀:いや、ぜんぜん。役に立てるんだったらやりますよ。

林:高校生のころ、神楽坂を歩いてたら、若い監督さんに「映画に出てくれない?」って言われて、それで出てあげたんですよね。

加賀:そうですよ。それがデビュー(「涙を、獅子のたて髪に」1962年)のきっかけですから。私は自分が「やりたい、やりたい」じゃなくて、「助けてほしい」と言われたときに「やってあげよう」と思うの。

林:「泥の河」(81年)も、ノーギャラでお出になったんでしょう? あの名作に。

加賀:そう。小栗(康平)監督のデビュー作品で、彼が助監督時代いろいろ大変だったのを知ってたからね。私はスケジュールがいっぱいだったので、私のためにわざわざあの舟を東宝の撮影所まで運んできて、私の場面を6時間で撮り上げたの。だからそれは(ノーギャラでも)しょうがない。

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