※写真はイメージです (GettyImages)
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 30年にわたって1万人近くの患者を診てきたという「松本診療所(ものわすれクリニック)」院長の松本一生さんは、「認知症は診断を受けた途端に絶望する病ではない」と話す。

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「日頃からもし自分が認知症と長期に向き合うことになったらどんなふうに生きたいのかを考え、ご家族にも話しておくといいと思います。多くの人が認知症はなったら終わりだと勘違いしていますが、認知症はなってからが『勝負』です」

 診療所には、家族に相談できず「認知症かも」という不安から訪れる人もいる。そのうち、およそ3人に1人が軽度も含めた認知症と診断されるという。

「認知症に効果があるのは、薬よりも日ごろからしっかりと水分をとって(心臓や腎臓に問題がある人は別)、1日15分以上は歩いて運動をする。そして人との交流を欠かさないこと。そうすることが認知症対策として望ましいと思います。なっていない人にとっては、なる可能性をかなり低くできると思っています」

 認知症かもしれない、と気になる人は、身近な人に「何かおかしなところ、感じる?」と聞いてみてもいい。国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)「もの忘れセンター」の櫻井孝さんは、身近な人がチェックをするのが有効という。

「同じものばかり買い込んでいるのは危険。買っていたことを忘れて同じものをまた買っていたとしたらそれは黄色信号だからです。2口コンロを同時に使えなかったりして、料理手順が悪くなり、3日連続同じレパートリーが出たりというのも心配ですね」

 これはよく言われることだが、食べたものを忘れるのはOKだが、食べたこと自体を忘れるのはNGという。

「お薬の飲み忘れも認知症の早期からよくみられる症状です。これは生活機能が落ちている症状です。たまに忘れる程度なら問題ありませんが、何回も続くようでしたら物忘れ外来の受診をお勧めします」

 複雑に絡み合う脳の機能のどこにどうダメージを受けているのかを調べるのが、物忘れ外来だ。外来患者の平均年齢は75歳前後という。受診する場合は、生活にどのような支障が出ているのかを具体的に伝えたほうがいい。認知機能の低下を感じたり、周囲から指摘されたりしたらすぐに診察が必要なのは理由がある。

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