(c) 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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「騎士道という課題に、かなり興味をそそられた。幼いころから騎士道の価値観を信頼すべきだと教えられ育った。他人を尊敬し、威厳を持ちお互いを助け合い……。幼いころから見て育った映画も、そんな価値観が貫かれていた。その事実を念頭に入れた。14世紀当時、貴族の男性や騎士の存在は絶対であり、女性はほとんど人間として認められていなかった。この価値観を、映画のあちこちにちりばめようと思った。過去において多くの映画は騎士道を抵抗なく受け入れてきたが、本当にそれでいいのか、と。これはアンチ騎士道の姿勢のある騎士道映画とでもいえるのかな。僕らが常識と思っている価値観に疑問を投げかけているんだ。一つめの物語、ジャンの物語は、典型的な騎士道的視点で描かれており、自分は騎士だから正しい、妻のためにやったんだ、という見解だ。真実はそうではないわけだが」

──マルグリット役のジョディ・カマーの抜擢について教えてください。

「この役にはジョディしか考えられなかった。映画会社のスタッフにも断言されてね。まずリドリーが、彼女に会い話をして、彼も彼女しかいないと同意してくれて『決まり!』だった。最高の選択だったよ。彼女の演技は素晴らしい、大満足だよ。驚くべき俳優だね」

──スコット監督といえば、才能ある女優さんを発掘する名監督ですが、最初から彼に監督を依頼する予定だったのですか?

「脚本を書く前から、リドリーに頼むと決めていた。実は、僕はリドリーと一緒に脚本家を探していたんだ。彼からは下書きの段階から、製作面についてのアドバイスをもらった。脚本を執筆しながら製作の準備もできたんだ。ベンに本作について話すと、三つの視点という構成を気に入ってくれて、二人で一緒に書こうということになった。そのあと女性の視点を加えるために女性の脚本家が加わったんだ。僕とベンは男性の視点から書くということで。そんな方法で書いたので、脚本は独創的に仕上がったと思う」

(高野裕子[在ロンドン])

週刊朝日  2021年11月5日号