(c) 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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──あなたはマルグリットの夫ジャンを演じるにあたって、史実など多くの資料を読んだのですか? 役づくりについて教えてください。

「ジャンは暴力的で嫉妬心の強い危険な男として名高かった。この映画は三つの視点から語る形式になっている。最初はジャン、次はジャック(アダム・ドライバー)の視点で、観客にゆがんだ認知による偽りの現実を提示するんだ。カギはその後の、マルグリットの視点から語られるところだ。彼女の物語を知ることで、観客はこれこそが真実だったんだと気づく。二人の男の視点はゆがんでいて、女性の視点を考慮せず、全く無視されていたということに」

──3人の視点から物語を三度語るというのは、あなたとベンの案ですか? それとも原作を反映させているのですか?

「僕らの発想だよ。近年はソーシャル・ネットワークが発達して、だれもが自分の見方を表現するのが簡単になった。一方で自分が見逃している点があることや、死角があったことに気が付くようになった。人は主観による自分だけの現実の世界に閉じ込められがちだ。他人の視点から物事を見ることが大切であり、それをふまえつつ結論を下すことが重要だと思う。オープンな視点というのが。3部作構成にしたのは、そういった僕らの思いが込められているんだ」

──24年ぶり、久々にベンと脚本を書きました。感想は。

「今回は、ずっと簡単だったよ。僕ら二人とも多くの映画を製作し経験を得たから。前回は製作の経験もなく、何をやっているのかもあまり理解しておらず、すごく長い時間がかかった。今回は二人とも二十数年の映画製作の経験を積み、脚本をどう構成していったらいいか理解していた。だから無駄もなく効率よく書き上げられたんだ」

◆既存の価値観 疑問を投げる

──心理ドラマの要素もあり、スリル満載な非常に面白い作品に仕上がっています。基盤にある中世ヨーロッパの騎士道や価値観について、かなり深く考察したのですか?

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