マット・デイモン (GettyImages)
マット・デイモン (GettyImages)

 ハリウッドを代表する俳優として、圧倒的な人気を誇るマット・デイモン。最新作「最後の決闘裁判」は、24年ぶりに親友ベン・アフレックとともに製作と脚本を手掛ける意欲作だ。同作へかける思いを聞いた。

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 原作はエリック・ジェイガーの『最後の決闘裁判』(ハヤカワ文庫NF、栗木さつき訳)。フランスで長い間語り継がれてきた、最後の決闘裁判という同国14世紀の歴史の一ページを描いた作品だ。

 マットはジャン・ド・カルージュを演じた。友人であったジャック・ル・グリが妻のマルグリットを強姦したとして、裁判を起こし決闘裁判で決着した。仏国民が息をのんだ大事件だったという。

 映画は3人の異なる視点から、事件を追う。英国の巨匠、リドリー・スコット監督が、美しいフランスの古城を背景に、中世騎士の地位と名誉をかけた戦いをスクリーンに焼き付けた。

──なぜ14世紀フランスの事件についての映画を製作しようと?

「原作を読んで、非常に興味をそそられた。現在の社会状況を考えても、面白い課題に思えたんだよ。興味を掻き立てられたのは、マルグリット・ド・カルージュという女性だった。信じがたいほど勇敢だと思った。女性にほとんど人権が与えられていない時代に、彼女は自分の命を、人生すべてをかけ、真実を語ったんだ。絶対に彼女についての映画が作りたい、と感じた」

──現代でさえ女性の人権問題にはまだまだ改善の余地があるのに、14世紀の人々が彼女の声に耳をかたむけ、裁判が行われた事実は驚くべきことです。

「彼女を黙らせようとした圧力は、かなりあったにもかかわらず彼女は口をつぐまなかった。勇敢に、事実を主張したんだよ。裁判が実現したことは驚きだった。王やフランス国民の前で、彼女は真実を語る機会を獲得した。口をつぐんでいたほうが彼女の人生はずっと楽だったはずだ。だが、彼女は困難で危険な道を選んだ。全仏を相手に、名誉をかけ、人生をかけ、命をかけることになった。その点にひかれたんだ」

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