(週刊朝日2021年10月22日号より)
(週刊朝日2021年10月22日号より)

 厚生労働省の調査(2020年、第466回中央社会保険医療協議会、主な選定療養に係る報告状況)によれば、1日あたりの平均的な差額ベッド代は、1人の個室で8018円、2人部屋で3044円、3人部屋で2812円、4人部屋で2562円。ただし病院によって金額は異なり、中には個室が約3万円、2人部屋であっても1万円を超すところもある。

 これに加え、入院時は、食べても食べなくても1日3回分の食事代がかかり、病衣やオムツなどが指定されていると、その金額も自己負担になる。

 その点、在宅療養であれば、食事は好きなものを少量食べたり、寝具やオムツも好みで選べるなど自由度が高いのも魅力だ。節約しようと思えば、個々の状況に合わせて工夫することもできる。

 一方で、一人での通院が難しくなってきているのに、なかなか在宅療養に切り替えず、外来で何とか頑張ろうとする人もいる。だが通院で意外と負担になるのが、家族が付き添って病院に行けない場合に、ヘルパーなどに頼む実費だ。通院のためにタクシーを利用すれば、交通費も結構な額になる。これまで800人を超える患者を在宅で看取った在宅医療専門医・中村明澄医師(向日葵クリニック院長)は言う。

「これに加えて付き添う人の時間や労力負担、病院で待たされる時間など、通院の際にかかる経済的・時間的コストと比較すれば、在宅療養でかかる費用も高くはないはず。医療保険では高額療養費制度、介護保険では高額介護サービス費の制度があり、収入に応じて自己負担額の減額がされるため、『貯金なんてほとんどない』というおひとりさまでも、制度を使えば在宅死は可能です」

 次に「介護」の費用を見てみよう。自宅での療養においては、介護保険サービスを利用することが大きな支えになる。訪問看護や訪問介護、訪問入浴など、さまざまなサービスを介護保険で受けることができる。介護保険は、収入に応じて1~3割の負担額があり、介護度ごとに支給限度額が定められている。その範囲内であれば、決められた自己負担割合で介護保険サービスを利用することができる。支給限度額を超える介護保険サービスを受けた場合には、医療保険と同じように、後で払い戻してくれる高額介護サービス費という制度もあるため、申請すればお金が戻ってくる。

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