閣議に臨む岸田文雄首相(C)朝日新聞社
閣議に臨む岸田文雄首相(C)朝日新聞社

 岸田文雄新首相は今後どれだけ独自色を出していけるのか。各分野には難題が待ち受けている。

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 最注目は経済対策だ。岸田氏は総裁選で「新自由主義からの脱却」をスローガンに掲げ、総裁就任会見でも、「成長と分配の好循環で格差を是正する」と表明した。8月から大手証券会社のアナリストをブレーンとして勉強会を進めてきたとの話も伝わるが、本当に実現できるのか。エコノミストの浜矩子・同志社大学大学院教授は「『成長と分配の好循環』は安倍政権後半から使われ始めた言葉」と指摘する。

「気になったのは『成長なくして分配なし』という言い方で、やはり先に成長ありき。そのどこが新自由主義的ではないのか。さらに『分配なくして次の消費、需要も喚起しない』とも言う。つまり、分配も経済拡大の手段として位置付けていて、富の偏りによって経済的に傷んでいる人たちを救うためではない。私はアベノミクスをアホノミクスと呼んできましたが、その路線と変わらない。岸田氏については当面、アホダノミクスと呼ぶべきかと思っております」

 安倍氏は首相在任中に「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と宣言。働き方改革で「柔軟で多様な働き方」を推進した。

「要は、不安定なフリーランスを奨励し、労働コストを抑え込む企みでした。本来取り組むべきは、このような路線からの訣別。分配は格差の解消のため、人々を幸せにできる経済の実現であると捉え直すべきです」(浜氏)

「第6波」への備えが求められるコロナ対策はどうか。岸田氏は臨時医療施設の開設などによって「医療難民ゼロ」、「ステイホーム可能な経済政策」などを掲げている。デルタ株が猛威を振るった第5波で問題になったのは、病床不足だった。

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師がこう語る。

「解決策は簡単で、公的病院で確保することに尽きます。厚生労働省傘下の国立病院機構とJCHO(地域医療機能推進機構)は東京都内だけでおよそ3千床持っているので、3、4割をコロナ専用ベッドとして開放すれば、それだけで医療逼迫はかなり軽減できるはずなのです」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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