住み慣れた家で最期を迎えたいと願うなら、どんな備えが必要なのか。前提として、在宅療養の対象となるのは、「一人で通院することが難しくなってきた人」。寝たきりの人だけでなく、足や膝、腰が悪くて歩いたり階段を上ったりすることが困難になったり、認知症などがあり待合室でじっと座って待つことが難しい人も対象になる。

(週刊朝日2021年10月8日号より)
(週刊朝日2021年10月8日号より)

 在宅療養を考え始めたら、訪問診療の医者を探すことからスタートする。まずは今通っている診療所や病院の医師に相談してみよう。在宅療養に対応できる診療所の数や質には地域差があるが、在宅医の探し方は一般的に、(1)病院からの紹介で在宅療養に移行するケース、(2)地域のケアマネジャーや訪問看護師、または薬局など、地元の口コミを元に評判の良い在宅診療医を紹介してもらうケース、(3)普段から通院しているかかりつけ医に相談するケースの三つが挙げられる。

 まずは在宅療養に関する相談窓口を訪ねてみるといい。在宅療養は、医師を中心に、訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパーなど職種が異なる専門職のチームが個々の状態によって組まれることから始まる。

(週刊朝日2021年10月8日号より)
(週刊朝日2021年10月8日号より)

 在宅医やケアチームにアクセスできたら、どのようなケアをしてもらえるのか、いろいろと質問すること。一口に在宅医と言っても、人柄や特徴、対応できることやできないことは異なる。残された時間を具体的にどのように過ごしたいのか、本人と家族が望んでいることを医師にしっかり伝えることが大事だ。

 兵庫県で、家での看取りを25年にわたって支援し続けている桜井隆医師(さくらいクリニック院長)は言う。

「たとえ日頃から相談できる医者がいなくても、今は在宅医を見つければ、在宅療養は実現できます。何より大事なのは『家で療養したい、家で最期を迎えたい』という本人の意思表示。まずは医師と会って、お願いしたいことを話し、それに対応してくれるかどうかを聞いてみること。世間話に終わるのではなく、きちんと希望を伝えることが大事です。長く知っている医師に看取ってもらうほうが楽な面はあると思いますが、初見でも何とかなるもの。残りわずかなタイミングであっても自分に合う医者は、探せば必ず見つかるはず」

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