古賀茂明氏
古賀茂明氏

 先週の本コラムの最後に、(自民党総裁選で)「河野・石破、さらに小泉進次郎環境相の三者によるKIK連合ができれば、国民は熱狂し、河野氏勝利となる。」「ただし、河野氏が森友問題の再調査と脱原発を明言することが条件だ」と書いた。

【写真】圧勝のシナリオは?

 14日に小泉進次郎環境相が、15日には石破茂元党幹事長が、正式に河野太郎行革担当相支持を表明し、予想通りKIK連合ができた。しかし、河野氏は、森友問題に関する再調査を否定し、原発再稼働を容認する姿勢を明らかにしている。多くの新聞・テレビでは、「河野氏変節」という報道が相次ぎ、疑念の目が向けられた。安倍忖度をしているように見えるからだ。このイメージのままでは、総裁選の一回目の投票で河野氏が過半数を制することはできない。有力候補である岸田文雄元外相との決選投票になれば、一般党員の投票がないため、国会議員票で有利とみられる岸田氏に敗れるかもしれない。

 それは、野党にとっては最高の展開だ。岸田氏が、決選投票で安倍晋三前総理の出身派閥である細田派と麻生太郎財務相の派閥である麻生派の多くと岸田派の大部分の議員票に支えられて当選すれば、誰が見ても、安倍麻生傀儡政権だ。河野氏勝利でも僅差になれば、安倍氏の影響力は残り、自民は変われない。

 その後に行われる総選挙では、野党側は、「安倍政治との決別」を掲げ、新政権は安倍傀儡政権だと叩く。総裁選フィーバーで回復した自民党支持率も再び低下。自民党単独過半数割れもありうるという展開で、野党支持層に「ワクワク感」が生まれる。投票率は上がり、その結果、野党大勝利が現実のものとなるかもしれない。

 だが、全く反対のシナリオもある。

 河野氏は党内の国会議員票を意識して、保守層に配慮する姿勢を見せた。これに対してリベラル層からは「変節だ」と疑われるが、右翼層からは、「これは偽りだ。本当はバリバリのリベラルで、脱原発派だ!」という批判がなされている。つまり、変わっていないというのだ。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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KIK自民が総選挙で圧勝するシナリオ