リリーさんは、この映画のことを「自分の家で、自分の好きなメディアで、自分の好きなボリュームで観るタイプの映画ではない」と断言する。

「音を感じる映画だと思いますね。雨の音、カレーがグツグツ煮える音、隣の物音、人の気配、ラジオから流れる音楽と言葉。そういう音色や音質を肌で感じるには、映画館で観てもらうのが一番だと思います」

(菊地陽子 構成/長沢明)

リリー・フランキー/1963年生まれ。福岡県出身。イラストレーターや放送作家、エッセイストなど、さまざまなジャンルで活躍しながら、2005年に発表した初の長編小説『東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~』が06年本屋大賞を受賞。絵本『おでんくん』はアニメ化された。映画の代表作に、「ぐるりのこと。」(08年)、「凶悪」(13年)、「万引き家族」(18年)など。来年公開の日英合作映画「コットンテール」に主演。

>>【後編/「結婚なんていうのは…」 リリー・フランキーが樹木希林と交わした会話】へ続く

週刊朝日  2021年9月3日号より抜粋