林:エマさんはお父さまがアメリカ人でいらっしゃるけど、日本髪とかお着物に違和感がなくて、言われないとみんなわからなかったと思う。海外にもルーツがある女優さんは役が限られちゃって、大成したのは宮沢りえさんぐらいだと言われてますけど。

宮澤:私は、これまで翻訳ミュージカルで完全な白人のフリをすることが多くて、「おちょやん」のお話をいただいたときまで、いわゆる“和もの”はやったことがなかったんです。なので、私にこの役が務まるだろうかと不安だったんですが、衣装のお着物を着ると、帯のキツさから始まって、動きも気持ちも、すべてが内へ内へと入っていく感じがしたんです。

林:わかります。

宮澤:だから私は着物にすごく助けられましたね。

林:昔から着物はあんまり着てなかったんですか。

宮澤:成人式と七五三ぐらいしか着たことがなくて、所作指導の先生が最初に指導してくださったとき、だいぶ絶望した顔をされてました(笑)。三味線をさわったこともなく、お着物もほぼ着たことがない人間にとってはすごく難しい作業でした。

林:三味線のお稽古、いっぱいしたんですか。

宮澤:毎日のようにしてました。関西の言葉がしゃべれて、三味線もお着物もすでに形になっている女優さんはほかにたくさんいらっしゃったと思うんですが、何もできない私を選んでくださって、私ってほんとに強運だなと思って感謝しています。

林:「おちょやん」の収録中に、アメリカのおばあさまが亡くなったそうですね。

宮澤:そうなんです。去年の7月に93歳だったのかな。クランクインはしてたんですけど、放送を見てもらうことはかないませんでした。誰よりも私が女優になることを熱望していた人なので、病室のおばあちゃんとフェイスタイム(iPhoneの通話アプリ)で話したときも、「撮影はどう?」「どんなお芝居なの?」とか、興味を持っていろいろ聞いてました。

林:そうなんですか。そして今度は三谷幸喜さんのお芝居にお出になるんでしょう?

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