林:大丈夫です。「おちょやん」であの栗子さんの役ができたんだから、もう何だってできますよ。「三谷組」といって、三谷さんが信頼している俳優さんが何人かいらっしゃいますけど、エマさんも「三谷組」って感じですね。私が見る限り、三谷さんは知的な雰囲気の聡明な女優さんが好きなんじゃないかと思う。

宮澤:三谷さんと最初に映画でご一緒させていただいたときは、フランクにお話する時間がなかったので、三谷さんが私の芝居をどう思っていらっしゃるかわからなかったんです。その後「日本の歴史」の初演の稽古が始まって2週間ぐらいたったときに、私、地下鉄で稽古場に行ってたんですが、乗り換えの駅の中にある小さいスーパーに夜ごはんを買いに入ったことがあったんですよ。そのとき、私のすぐうしろ、すごく近い距離に人の存在を感じて、横目で足元を確認したら、男の人らしい雰囲気だったんです。ちょっと気持ち悪いなと思ってチラッと振り返ったら、それが三谷さんだったんです(笑)。

林:まあ!

宮澤:利用している路線が同じだったんですね。三谷さんからキャストの携帯にショートメールでダメ出しが行くんですけど、私にそれが来たとき、返信で「気持ち悪いオジサンが近づいてきたと思ったら、三谷さんだったのでホッとしました」みたいなメッセージを書いたんです。それがきっかけで、よくお話するようになった気がします。三谷さんに無礼な感じで接する若手の俳優を、たぶんおもしろがってくださったんじゃないかと思います(笑)。

林:エマさんはアメリカの大学を出たあと、イギリスのケンブリッジ大学で演劇の勉強をしてらっしゃったの?

宮澤:私、アメリカの大学の3年生のときにイギリスに1年留学したんです。アメリカの大学では宗教学を専攻しまして。

林:あ、宗教学だったんだ。私、最近、渡辺謙さんの、インカ帝国が舞台の「ピサロ」を見て、当時のキリスト教がどれほど残虐な行為をしていたかということに衝撃を受けて、世界の歴史における宗教に関する本をあらためて読み直してたんですよ。とはいえ、宗教について私は幼稚園レベルの知識ですけど、エマさんはすごいことを勉強してらしたんでしょうね。

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