宮澤:私が中学生ぐらいのときに9.11が起きたんですけど、私は宗教についてまったく知らないというコンプレックスをずっと抱えてきたので、アメリカの大学では、人間の歴史の中で宗教はどういう役割を果たしてきたかということを勉強したんです。日本人は無宗教っていいますけど、決してそうではないし、文学にとっても、芝居をする上でのキャラクターにとっても、宗教ってほんとに大きいものなので、そういうことを大学で勉強してよかったと、いま俳優をやっていて感じています。

林:そんなバイリンガルのエマさんが、実は日本の歌謡曲が大好きなんですよね。「歌謡曲の詞がいい」ってどこかでおっしゃってたけど、バイリンガルのエマさんの心を、日本の歌謡曲の詞が刺したということですか。

宮澤:はい。歌謡曲の中で歌われる日本語の美しさにひかれるんだと思います。プロの作詞家、作曲家がいらっしゃって、その方たちが中心になったチームがつくり上げたものを、歌手の歌唱力によって一つの世界をつくるというところが、お芝居にちょっと通ずるところがあるなって思うんです。

林:おー、なるほど。

宮澤:ミュージカルをやっているとすごく感じるんですけど、英語のためにつくられたメロディーに翻訳した日本語を無理やりのせると、日本語の言葉の美しさを表現できないことがあるんですね。でも、歌謡曲っていうのは洋楽の美しさと日本語で歌うことの美しさが無理なく融合している感じがして、歌い手として歌いやすいなと思うし、聴いてる側も、スッと心に届くんじゃないかなって思います。

林:バイリンガルのエマさんだから、よけいそう感じるんでしょうね。このあいだNHKの「うたコン」でちあきなおみさんの歌を歌ってましたね。

宮澤:「夜間飛行」を歌わせていただきました。

林:よくこんな難しい歌をこの若さで歌えるなと思って感心しました。相当難しい歌ですよね。

宮澤:難しいです。練習しながら、ちあきなおみさんのすごさをあらためて実感しました。

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