だが、菅義偉氏が首相になると、新型コロナに対するワクチン担当を、田村憲久厚労相でも、西村コロナ担当相でもなく、河野太郎氏に決めた。菅首相としては、田村氏も西村氏も、はっきり言えば信頼できなかったためであろう。

 そして、日米首脳会談のために訪米中の4月17日に、ワクチンを開発しているファイザー社のCEOと電話で話をして、9月中に国内の対象者全員にワクチンを供給できる見込みがついた、という。

 このことで本当に9月中に全対象者のワクチンが確保できた、と言えるのだろうか。

 また、気になるのは、菅首相が緊急事態宣言を5月11日までとしていることである。

 5月17日にはIOCのバッハ会長が来日して、東京都幹部と五輪担当相らと会談して、東京五輪・パラリンピックの開催を最終決定することになっている。菅首相としては、何としてもそれ以前に緊急事態宣言を解除して、感染者数を減らしておきたいのだ。できなければ、この会談が難しいことになる。しかし、もしも感染者数が増えていたらどうなるのか。

 東京五輪開催は難しくなり、そうなると、菅政権自体の持続も難しくなるのではないか。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2021年5月7-14日合併号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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