イラスト/今崎和広
イラスト/今崎和広
不育症のリスク因子別頻度 (週刊朝日2021年3月26日号より)
不育症のリスク因子別頻度 (週刊朝日2021年3月26日号より)
不育症データ (週刊朝日2021年3月26日号より)
不育症データ (週刊朝日2021年3月26日号より)

 妊娠はするものの、流産や死産を繰り返して結果的に子どもを持てない場合を「不育症」と呼ぶ。原因はさまざまだが、専門外来で検査をし、適切な治療を受けることで不育症患者の約85%が出産にたどりつくことができている。

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 流産は珍しいことではなく、全妊娠の10~15%で起こる。そのほとんどは赤ちゃん側(受精卵)の染色体異常によるもので、自然淘汰ともいえる。そのため次回の妊娠では問題なく出産できる可能性が大きい。

 しかし、流産を2回3回と繰り返してしまうケースもある。日本で妊娠歴のある35~79歳の女性を対象に行われた調査では、約4.2%が2回以上の流産を経験し、約1%は3回以上経験していた。日本医科大学病院産婦人科教授の竹下俊行医師はこう話す。

「流産を繰り返す場合は、赤ちゃん側だけではなく親側に原因がある可能性を考えなければなりません。次の流産を防ぐには、検査をして原因を見つけ出し、治療をする必要があります。2回流産を繰り返したら、検査を受けたほうがいいでしょう」

 なお妊娠10週を超えると受精卵の染色体異常による流産率は下がるため、この時期以降の流産は親側に原因がある可能性が高くなる。初めての流産でも妊娠10週以降だった場合は、検査を受けたほうがいいという。

 検査は、抗リン脂質抗体(後述)などを調べるための血液検査と、子宮の形に異常がないかを見る3D超音波検査などが基本。必要に応じて、さまざまなオプションの検査を追加していく。

 基本的な検査は、ほとんどに健康保険が適用される。オプションの検査には保険適用外のものもあるが、費用を助成する自治体が増えてきている。

 不育症の主な原因は「抗リン脂質抗体症候群」「もともと子宮の形が通常と異なる子宮形態異常」「夫婦いずれかの染色体異常」の三つだ。竹下医師は言う。

「この3大原因のほかにも、ホルモンの異常、糖尿病や甲状腺疾患、感染症、免疫異常などさまざまな原因があると考えられています。どの程度流産とかかわりがあるのか、研究中のものもある中で、3大原因は明らかに流産の引き金になる。ただしいずれかをもっているからといって、必ず流産するわけではありません」

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