「意識してほしいのは、ただ食べるのではなく、手間をかけるということ。スープを作るために買い物をしなくてはなりませんし、毎日何かをするという手間が認知症の予防にもつながります」

 何歳から始めても効果は期待できるそうだが、実際に、こんな実験結果がある。内野さんは物忘れに不安がある40~60代の6人に、脳のおそうじスープを2週間、一日一杯試してもらい、開始前と2週間後に、75歳以上の高齢者が運転免許更新の際に受ける認知機能検査を受けてもらった。

「点数が下がった人はおらず、平均で5点以上もアップしました。この先も長期的に見る必要はありますが、改善に効果があるとお勧めできます」

 冒頭のYさんもモニターの一人。Yさんは10点以上アップしたという。

「最初は半信半疑でしたが、調理は簡単で味もおいしいので無理なく続けられました。以前は頻発していた物忘れが減りましたし、効果を実感しています」

 30年前から認知症研究に関わり、『脳の毒を出す食事』(ダイヤモンド社刊)の著書がある、白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二医師は、認知症研究の第一人者、米国のデール・ブレデセン博士の指摘をもとに解説する。

「脳に何らかの“毒”が入るとアミロイドβがたまると指摘されています。毒となる異物が入ってしまう機会は、特に食生活においていたるところにあります」

 たとえば小麦などに含まれるグルテンというたんぱく質は認知機能を下げているとされるなど、認知症は食べ物と密接にかかわる食源病という側面もあると白澤医師は言う。

「であれば、食事の改善で予防、治療もできるだろうというのが認知症における基本的な考え方。何が毒なのかを把握し、食べないことが大事です」

 とはいえ、これまでは知らずに取り込み、ため込んでしまったゴミや毒は食事でも出せるという。

 毒を出すのに効果的な食材を白澤医師に紹介してもらった。イチオシはカレーだという。

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