2月12日に東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長を辞任した森喜朗氏。その名前がひっそりと、ある財団のホームページの「最高顧問」の欄から消えていた。その財団とは、一般財団法人の「日本スポーツレガシーコミッション」。スポーツ関連の団体の連携を図ったり、スポーツの発展を支える人材づくりに取り組んだりする目的で2020年3月に設立されたという。内情を知る政府関係者が語る。
「東京五輪後の組織委の解散後も、森氏を中心とした組織委の影響力を継承・維持することを念頭に作られた団体です」
どういうことか。設立時の資料をみると、財団の主要メンバーには、最高顧問に森氏と御手洗冨士夫キヤノン会長兼社長CEOの2人をすえ、会長に河村建夫スポーツ議員連盟会長代行、理事長に遠藤利明東京五輪組織委会長代行らの名が並ぶ。傘下の「特別会員」には、日本スポーツ協会(JSPO)、日本オリンピック委員会(JOC)といった主要団体が加わり、それぞれの会長ら幹部が「評議員」や「理事」などとして名を連ねている。
「登場するメンバーの多くは森氏と近い“ファミリー”。最高顧問の森氏を頂点に、スポーツの主要団体を束ねる一大コングロマリットになるとみられていた。東京五輪などの国際大会の剰余金や、今はJOCが差配する各競技団体への強化費なども掌握すれば、巨大なスポーツ利権になる」(前出の政府関係者)
ちなみに5人の理事や6人の評議員は全員男性。いわゆる「わきまえた」人たちということか。
「森ファミリー」をめぐっては、もう一つ注目すべき動きがある。19年のラグビーW杯は成功を収め、実質的な黒字(剰余金)が約68億円に上り、「W杯史上最高」を記録した。この剰余金の使途をめぐり、ある計画が進行しているという。
「68億のうち20億は、今後移転整備される秩父宮ラグビー場内に19年W杯を記念した博物館を整備することなどに充てられる方向。『ハコモノ』に使われることにはラグビー関係者内に異論もあったが、森氏が副会長、御手洗氏が会長を務めるW杯組織委の主導で決めた。敷地内に森氏の功績を称える銅像を建てるという話もあると聞きました」(前出の政府関係者)