菅義偉首相(C)朝日新聞社
菅義偉首相(C)朝日新聞社
1月2日、内閣府で西村康稔経済再生相と小池百合子氏ら1都3県の知事が会談。終了後、報道陣の取材に応じた(C)朝日新聞社
1月2日、内閣府で西村康稔経済再生相と小池百合子氏ら1都3県の知事が会談。終了後、報道陣の取材に応じた(C)朝日新聞社

 1月7日、緊急事態宣言を再発出した菅義偉首相。感染爆発に至ってからの“グズグズ”な再発出には「遅すぎた」との批判が絶えない。その裏には、政治家同士の不毛な対立が──。

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 菅義偉首相の緊急事態宣言再発出は、なぜ後手に回ってしまったのだろうか。本誌の取材で、菅首相と小池百合子東京都知事、コロナ対策を担当する西村康稔経済再生相の3人の間の確執と政治的な駆け引きが「元凶」になった構図が浮かび上がってきた。

 そもそも、緊急事態宣言に一貫して消極的だった菅首相が今回の再発出に至ったのは、1月2日に小池氏が仕掛けた動きが発端だった。

 この日、小池氏と神奈川、千葉、埼玉の3県の知事が、緊急事態宣言の再発出を求めて電撃的に内閣府を訪問し、西村氏と面会した。官邸関係者は言う。

「小池氏らは当初、菅首相との面会を求めていましたが、結果的に菅首相とも相談の上、西村氏が単独で会談に応じることになった。西村大臣としては昨年12月に菅首相と小池氏が『Go To トラベル』の対応をめぐり二人で会談した時のように“スルー”される事態は避けたかったのではないか」

 会談は紛糾して3時間に及んだが、その後のぶらさがり取材で西村氏は再発出について「検討する」と答えるのみ。この間に菅首相は議員宿舎に帰宅しており、コロナ対策に消極的な印象を与えてしまった。

 話を会談に戻すと、この時の政府側は戦闘モードだった。小池氏に押し切られて再発出すれば「政府の対応が遅い」というイメージが世間に広がるのは確実だからだ。ある自民党幹部が言う。

「西村大臣は会談前に菅首相から『再発出すれば大変なことになる。小池氏主導の提案には乗るな』といった話をされていたそうです」

 このため、政府は何か強力な攻めどころはないかと事務方に探させ、ようやく見つけた「有効打」が、飲食店の時短の前倒しだったと前出の官邸関係者は振り返る。

 大阪市は飲食店への時短要請に伴う閉店時間を21時としていたが、東京など首都圏は22時のまま。そこで西村氏は小池氏ら4知事に対し、閉店時間を20時まで前倒しするよう求めたのだ。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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北海道、大阪は抑え込みに成功という「印象操作」