同会の理事長でもある菅谷医師が危惧するのは、子どもの新型コロナウイルス感染症のリスクと、ワクチンで防げる病気のリスクに対して、正しい評価ができていないという点だ。

「子どもは新型コロナに感染しても軽症か、無症状のことが多く、重症化することはほぼありません。むしろ、ワクチンの接種率が低下によって、新型コロナが収束した後にワクチンで防げる病気が流行して、子どもたちが重症化するリスクのほうがこわいのです」

 その上で、予防接種率を迅速に評価できるシステムづくりが必要と考える。実は、わが国には接種率がどれくらいで、どれくらい下がったのかという正確なデータがない。

「データがあれば、今回のコロナのように新しい感染症が流行して接種率が低下したときに、そのデータに基づいて行政が接種を勧奨していくことができます」

 では、予防接種を受けないとどんなデメリットがあるのだろうか。菅谷医師が答える。

「予防接種を受けなければ、予防接種で予防できた感染症にかかるリスクが増えます。麻しん、百日せき、ロタウイルス感染症は、年少児がかかれば重症化し、命に関わることもあります」

 また、予防接種を受けていない人たちが増えるということは、社会的なリスクにもなる。

「今の日本は、予防接種で防げる病気で大きな流行は起こっていません。しかし、このコロナ禍で海外でも予防接種の接種率が低下しています。そこで流行が始まって、人の往来が従来通りに戻れば、ウイルスが外国から持ち込まれる可能性は高い。そのときに予防接種を受けていない人たちがいれば、日本でも流行が起こります」

 子どもに必要な予防接種は予防接種法によって、ワクチンの種類ごとに接種する年(月)齢や回数、間隔が決められている。そのなかには生後14週6日までに受けなければならない、接種期間が短いロタウイルスワクチンのようなものもある。

 このスケジュールに沿って予防接種を受ければ公費でまかなわれる定期接種となるが、タイミングを逃すと自費で受けなければならなくなる。幸い、厚生労働省が特例とし、定期接種ができなかった相当な理由があると市町村が判断した場合は、時期を過ぎても定期接種として受けることができるとしている。「大事なのは、接種もれした子どもたちに、いかに予防接種を受けてもらうか」と菅谷医師。

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子どもはインフルエンザにかかるリスクが高い