一方で、案里被告の裁判は着々と進行している。10月7日、証言に立ったのは、案里被告の女性公設第1秘書だ。克行被告がこの女性秘書に「なぜ検察官のほうを向いて証言するんだ」と声を荒げて、裁判長から9月4日、注意された。この女性秘書は広島県江田島市の胡子雅信市議に10万円をばら撒いたとされ、3度目の証人尋問を受け、次のように生々しく証言した。

「克行被告から、A4サイズの茶封筒を受け取り、胡子先生に渡すように指示された。案里被告もそれを知っていた」

「(昨年の)6月16日に江田島市のカラオケ大会があったときに胡子先生に手渡して、克行被告に報告しました」

「封筒を持った感触で中身が現金だろうとある程度、察知していた。参院選の支持の依頼のためのお金と思い、違法なものかもしれないと、早く自分から封筒を手放したいと思っていた」

 胡子市議も法廷で違法性を認識しながら10万円を受け取ったことをこう認めた。

「克行被告からと女性秘書に言われてもらった。表に出せないカネと思った」

 法廷にいない克行被告は、もちろん反論できず、ますます窮地に追い込まれる。元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士はこう話す。

「克行被告は国選弁護人に賭けるべきだと思う。国選弁護人なら自民党など気にせず、被告人の利益のための弁護となるはず。克行被告がなぜカネをばら撒けたかというと自民党から1億5千万円という巨額の資金を得たからです。参院選当時、広島の自民党が溝手氏で一本化。カネをばら撒くにも自分の手でやるしかなかった。自民党だって、巨額の資金を提供したのだから、その使途はわかっていたはず。今のまま裁判に臨めば、克行被告はまず、実刑だろう。克行被告がそういう背景を裁判できちんと話せば、裁判長の印象も変わってくるはず」

(今西憲之)
※週刊朝日オンライン限定記事