篠田:確かに落ちますが、それが自然では(笑)。順調に生まれて順調に育っていくのと同じように、順調に衰えて死んでいくということが、介護している家族には見えないことが多いですね。

久坂部:「順調に老いる」。いい言葉ですね。老いを否定している人が多いですからね。新聞で篠田さんの介護体験が紹介されていた「ケアノート」や著書の『介護のうしろから「がん」が来た!』を読ませていただきました。壮絶な介護をされながら書く余力はすごいと感じています。

篠田:当時、母は老健にいたんです。その後、グループホームに移るために、地元で14カ所の施設を見学しましたが、どこも空きベッドがなくて。そのほかのことも含め介護制度は使いにくいなと思いました。

久坂部:そう思われるのは、期待値が高いからなのかもしれませんね。

篠田:そもそもケアマネジャーにたどり着けなかったですね。ケアマネさんを入れたくても、「なぜ他人が人の家のことを詮索する?」と。家族がいるのに他人が介在するというのが許せない。来てもらっても、「いりません」で門前払い。ある家族の話ですが、やはり他人がダメなので家族5人で時間割を作って介護していたのですが、ついに限界が来た。そこで知人の病院に入院させてもらい、そこから老人ホームに移したそうです。

久坂部:認知症の人の家に在宅診療で行くと、白衣を着ているだけで頭を下げるという人もいます。救急車同様、白衣にもパワーはあるみたいです(笑)。ただ、うまいケアマネはその人に合った持っていきようがあることを知っています。「嫌だ」には理由があるので、その理由を探り当てて、徐々に解きほぐしていく。腕のあるケアマネさんだと、それができるんです。

篠田:かかりつけの病院があるとグループ内の在宅サービスにつながりケアマネさんも自動的に決まる。他のケアマネを希望しても、病気になったときにそれまで診てもらっていたかかりつけ医や病院と縁が切れるのが不安です。

久坂部:制度的にはケアマネを代えることは可能です。役所に連絡すれば代えてくれるはずです。現実的にはその人に悪いかなとか考えてなかなかできませんね。やはり、いい人ほど苦しむのが介護なんだなって思いますね。

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