篠田:そういうものですか。

久坂部:厚かましい人が得したり、いい加減にやってるのにうまくできちゃったり。100点を目指しちゃうとうまくいかないパターンもありますね。

篠田:そうかもしれないですね。母が慢性硬膜下血腫で手術したときは、入院していた病院から別の病院に移るように言われ、見学に行ったのですが、そこは高齢の認知症患者には不向きなところで、ここでは母は無理、と判断しました。他に受け入れ先がなく治療途中で退院となり、家でみることにしたんですが、制度の谷間で孤立し、これでは介護殺人が起きるのも無理もないなと感じました。

久坂部:私も気持ちはわかりますよ。肯定はできませんけど、そういう悲しい結果になってしまった人をひどいと言うことはできませんね。

篠田:私など介護殺人のニュースをテレビで見るたびに、「執行猶予つけろ」と叫んでいます(笑)。

久坂部:訪問診療で医者が家に行っているのに、介護しているご主人が奥さんに「死ね!」と言っているところに行ったことがあります。奥さんは夫に「殺せ、死ねたら自分で死ぬわ!」って言い返している。理由を聞いたら、夜に奥さんが自分でトイレに行けないので、ご主人を起こしてトイレに行く。だからご主人は睡眠不足になってイライラしているというんです。ポータブルトイレを勧めると、「嫌だ、トイレでしたい」って。おしっこ問題でも「死ね!」「殺せ!」となるんです。

(構成/本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2020年7月3日号より抜粋