家族の死後には、煩雑な手続きを一日がかかり。役所で複数の窓口をたらい回され、重複した内容を記入するなど労力を要する。そんなイメージが、自治体による「専用窓口」導入で変わりつつある。便利で時間の短縮になり、コロナショックで心配な「3密」を避けることにもなる。大きく変わる役所の窓口の活用法を紹介しよう。
専用窓口を設ける自治体には、企業の手を借りるところもある。
19年11月に「おくやみ窓口」を設けた宮崎県都城市は、大日本印刷が開発した「ナビ付申請書」のシステムを導入。15課にわたる最大70以上の必要な書類を一括してつくれるようにした。
「手続きにかかる時間が短くなっただけでなく、全部すませたかどうかの不安もなくなったと好評です」(担当者)
大日本印刷のシステムは、職員が画面上の案内に従って聞き取った情報を入力する仕組みだ。記入ミスや漏れを防ぐ効果もある。
東京都板橋区なども同社のシステムを導入し、転居や離婚といった複数の手続きに対応している。
岐阜県高山市は20年1~3月に、ソフトウェア開発会社「サイボウズ」(東京都中央区)の業務管理システムを試験した。市民からの問い合わせなどをクラウド上で管理・共有できる機能で、「おくやみ窓口」も実験。25の関係課にわたる手続きを一つの窓口に集約し、市民の待ち時間を最大約4割減らせたという。年内の運用開始に向けて調整している。
厚生労働省によると、18年の死者数は全国で約136万人。20年間で1.5倍近く増えた。一人暮らしの高齢者も目立ち、今後は家族や親族でも、生前の状況を十分把握できないケースが増加するとみられる。
神奈川県横須賀市や新潟県長岡市、静岡県熱海市などでは、一人暮らしの人がお墓や緊急連絡先、遺言の保管場所などを登録できる事業をしている。横須賀市の北見万幸・福祉専門官はこう意気込む。
「生前の備えと、おくやみコーナーのような亡くなった後の支援をうまくつなげられれば理想的です。今はどちらもしている自治体は限られていますが、孤独死が増えるなか、市民のためにやれることはどんどんやっていくべきです」