死後の手続きの壁になるのが、銀行口座や保険などについて家族でもわからないことがあること。パソコンのパスワードなどをメモしている人は少なく、亡くなってからの確認は難しい。

 都城市や東京都武蔵野市などは、希望者に「エンディングノート」を配り、お墓や葬儀など「もしもの時」の希望に加え、財産の情報や家族へのメッセージを残せるようにしている。武蔵野市は職員が書き方を教える出前講座もしている。

 自治体で独自の動きが広がるなか、国も手続きの効率化を支援している。内閣官房は、遺族ごとに必要な手続きを選び書類をつくるシステム「支援ナビ」を開発。希望する自治体への提供を始めた。

「システムは松阪市などの協力を得てつくりました。約30の質問に答えてもらうことで必要な手続きを絞り込む仕組み。自治体ごとにカスタマイズできるようにしています。どこでも利用できるよう無料で開放するので、遺族がたらい回しされないよう活用してほしい」(内閣官房IT総合戦略室)

 実証事業に参加した千葉県船橋市や北海道室蘭市などが導入に意欲を示しているという。内閣官房はコーナーを設置するための指針をまとめ、講師も派遣して導入を促す。将来は死亡手続きをネットを通じて「オンライン」でできるようにすることも検討中だ。手続きのデジタル化に合わせ、エンディングノートに書き込むような情報を登録できる仕組みも整備する。

 手続きそのものが減るように規制緩和も進める。総務省行政評価局が19年3月にまとめた実態調査によると、死亡に関する届け出67件のうち、ほかの手続きで登録された情報で省略できるものが21件あった。国民健康保険や後期高齢者医療保険の資格喪失の届け出などだ。

 亡くなったときに限らず、役所の手続きは複雑で時間がかかる。新型コロナウイルスの感染拡大で支援申請の人らが集まり、役所の窓口は混雑している。国が1人10万円を配る「特別定額給付金」の相談などもあって、待ち時間がかかることも。密閉、密集、密接の「3密」になりやすく、見直しは緊急課題だ。

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