遺族の主な手続きと担当課 (週刊朝日2020年6月5日号より)
遺族の主な手続きと担当課 (週刊朝日2020年6月5日号より)
死亡手続きを集約した主な自治体 (週刊朝日2020年6月5日号より)
死亡手続きを集約した主な自治体 (週刊朝日2020年6月5日号より)

 家族が亡くなると、役所でたくさんの手続きをしなければならない。遺族にとって大きな負担だが、専用の窓口で、手続きを一元化する動きが広がる。大きく変貌する役所の窓口のいまに迫った。

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「結局、一日仕事でした」

 神奈川県に住む40代男性はこう振り返る。妻や子どもと一緒に暮らしてきた70代の父親が4年前に亡くなったとき、市役所の窓口で思った以上に時間を取られた。

 まずは死亡届と埋火葬許可申請。それから国民健康保険証や介護保険証の返還、世帯主変更届の提出や介護保険料の還付、葬祭費の支給申請など。結局10カ所近い部署を回って書類を出した。

「役所の本館と別館を行き来し歩き回りました。それぞれの窓口で同じような内容を書かされたり、説明したりするよう求められました。窓口を探すのもひと苦労で待ち時間も長い。それだけやらされても、手続きが全部済んだかどうかわからず不安でした」

 役所では市民課や保険年金課など手続きごとに担当するところが異なり、それぞれの課の担当者に説明を繰り返す。お役所仕事の弊害である「縦割り」だ。多くの人がちょっとした相談でも、「ここは担当ではありません」とたらい回しされた経験があるだろう。

 年齢や家族構成のほか、病気や障害、資産の有無、年金や健康保険の種類などによって必要な書類は様々だ。

「多い人では手続きが100件を超えるケースもあります」(ある自治体の担当者)

 主な手続きをまとめた。年金や税金などが絡めば手続きは複雑になる。自治体の主な分だけで、国の機関である裁判所や税務署などに出すものもある。金融機関や電話会社など民間のものもあり、遺族にとっては一苦労だ。

「丁寧に説明してくれて、とても助かった」

 大分県別府市には、市民からこんな声が寄せられる。市役所に2016年5月、「おくやみコーナー」を設置。手続きをまとめて受け付ける取り組みを始めた。

 かかる時間はそれまでの「3分の2程度」に短縮できたという。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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