松阪市は別府市をモデルに独自の工夫を加え、遺族が担当部署を回らずにすむようにした。銀行口座や税務、電気・ガスといった民間の手続きについても、職員が案内できる。

 別府市は遺族がいきなり訪れることを前提としているが、松阪市は「予約制」が基本。あらかじめわかっている情報を予約時に聞いておけば早くすむためだ。

 松阪市の人口は約15万8千人。1カ月あたり150~200件の利用があるという。

「何もわからないので市役所に何度も行かなければならないと思っていました。職員が丁寧に案内してくれて、手続きは1日ですみました」

 松阪市が導入後4カ月に利用した遺族約600組にアンケートしたところ、このように評価する意見が相次いだ。回答した約300組の9割以上が手間が減るなど「満足できる」と答えたという。担当者は手ごたえを感じている。

「ゆくゆくは死亡以外の手続きもワンストップですませられるように、取り組みを広げていきたいと考えています」

 群馬県渋川市では、出生や転入など、死亡以外の手続きも集約した窓口ができている。自分で回るほうが時間的に早くすむが、高齢者らには好評だ。

「市長のトップダウンで暮らしに関わる窓口をできる限り一本化しました。『いろいろ回らなくていいから楽』といった意見が寄せられています」(担当者)

(本誌・池田正史、多田敏男)

週刊朝日  2020年6月5日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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