コーナーを訪れると職員から「お客様シート」を渡される。死亡者の氏名や生年月日、高額医療費や葬祭費の振込先などを書き込む。職員がシートの情報をパソコンに打ち込むと、必要な手続きが自動的にわかり、それぞれの書類がまとめて作成される。従来は書類ごとに氏名や住所などの項目を何度も書いていた。

 書類ができると、どこに行けばよいかなどの説明があり、一覧表をもらえる。遺族はそれに沿って担当部署を回る。情報管理やシステムの問題もあって完全なワンストップサービスではなく、原則として自分で回らないといけない。それでも、遺族にとっては大幅な負担減だ。

 シートの情報は庁内のネットワークを通じて担当部署に伝わり、職員は準備ができる。遺族の体調が悪いなど回ることができない場合は、担当職員がコーナーまで来て対応することも。コーナーの担当者は利便性をこう強調する。

「以前は何回も同じことを書かされるといった苦情があり、途中で疲れて帰ってしまう人もいました。改善すべき点はありますが、少しでも便利になるようにしたい」

 コーナーを設けたのは、もともと若手職員の提案がきっかけだ。当時就任した新市長の意向で、「窓口改善プロジェクトチーム」ができた。その議論で、死亡手続きを優先的に改革することが決まった。当時は最大13課で67種類の書類が必要だったという。

 改革の方針が決まり、必要な書類を抽出・作成して担当課に知らせるシステムを自前でつくった。予算を抑えつつ、1カ月ほどでコーナーを実現させた。

 運用を始めるとほかの自治体でも評判となった。今では三重県松阪市や神戸市、神奈川県大和市、宮崎県都城市など、各地で同じような窓口が相次いで設けられている。

 このうち17年11月に設置した松阪市は、別府市を「お手本」にしたという。担当者はこう話す。

「市長主導で窓口業務を洗い直しました。出生や結婚離婚や引っ越しなどライフイベントで必要な手続きのうち、最も個人差が大きく煩雑なのが死亡手続き。そこで先行する別府市の状況を視察しました。システムのモデルとなるデータまで、無料で提供してくれました」

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