古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など
古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など
萩生田光一文部科学相(c)朝日新聞社
萩生田光一文部科学相(c)朝日新聞社

 学校休校が長引く中、9月入学論が盛り上がっている。前からある話だが、文部科学省や自治体教育委員会などの反対で実現困難だった。

【写真】萩生田光一文部科学相

 せっかく自治体側がやりたいというのだから、今回は、ぜひそれを実現すべきだと私は考えている。

 そこで、今回のテーマだが、9月入学と密接に絡んだ問題について紹介したい。

 9月入学の最大のメリットは、9月入学が主流の欧米の学校と相互に留学しやすくなることだ。ただし、一つ留意点がある。それは、優秀な人材の海外流出が一気に加速する可能性である。

 背景には二つの要因がある。一つは優秀な若者は海外で働いたほうがはるかに稼げること。もう一つは日本の未来は暗いということだ。

 この見方には異論もあるだろう。しかし、海外生活経験のある富裕層などを中心に、これは半ば常識化している。

 週刊朝日(5月1日号)が掲載した2019年の海外大学合格高校ランキングでは、1位広尾学園74名を筆頭に6位までが50名超の海外大学合格者を出し、筑波大学附属駒場や灘などの一流校は、ハーバード、プリンストンなど米国の超一流校に合格者を出している。東大を蹴って米大学を選ぶ者も増加中だ。そこで紹介された「日本の大学では先行きは暗い」「海外のほうが将来が開ける」という保護者の声は日本の現状を的確に表している。

 昨年9月に私が対談した米投資家のジム・ロジャーズ氏の「私がもし10歳の日本人なら、直ちに日本を去るだろう」という言葉は現実になりつつあるのだ。

 海外で活躍するには、世界で通用する学歴が必要だ。「東大」でも世界の大学ランキングでは36位。アジアランキングでも、日本から上位20校に入れるのは、8位東大と11位京大だけで、20校中、中国6校、香港・韓国各5校、シンガポール2校という状況だ。

 つまり、日本の大学に行くより海外の大学か大学院を出るほうが良いということになる。

 日本を見切った何百人もの若者が毎年米大学に渡れば、企業の紐付き留学とは本気度が違うから、そのうちの一定割合が米社会で活躍し始めるのは確実だ。彼らが発信する情報は広く日本中に知れわたり、東大より海外の有名大という流れは明確になるだろう。

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古賀茂明

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古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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