厚生労働省は2月1日、中国・武漢市からの帰国者のうち、新たに3人からウイルスが検出されたと発表した。国内の感染者は20人となった。
厚労省の結核感染症課の梅田浩史室長は会見で、ネットを中心にデマが広がっていることに警戒を呼びかけた。
「いま残念なことにデマが出回っている。重症患者がたくさんいるとか、入院患者が病院を逃げ出して観光地に行ってウイルスをまき散らしているとか、SNSなどでデマがあると聞いている。よくわからないウイルスであるということもあって、不安に感じることは当然あるのかもしれないが、国民の皆さまには正しい情報に基づいて、正しく恐れていただくことが極めて重要だと思っている。私どもも不十分かもしれないが、速やかに分かりやすい情報発信に努めていきたい。そういったデマに惑わされず、冷静に対応してもらえるようお願いしたい」
中国人らへの差別的な動きについても、こう呼びかけた。
「中国の方への人権侵害につながるような書き込みとか、患者の治療にあたられている病院関係者の子どもについて差別がなされることが起きていると聞いている。決して人が悪いわけではなくウイルスが悪い。私どもも感染拡大防止に引き続きしっかり取り組んでいくので、ご協力をお願いしたい」
新型コロナウイルスの感染者はこれからも増えそうで、不安はすぐに解消されそうにない。世界的に収束するまでには、数カ月以上はかかるとみられる。デマや差別的な動きを防ぐための議論や対応が、政治や行政に求められる。
こうした厳しい状況のなか、対応に当たる医療関係者や公務員、民間の支援者らには大きな負担がかかっている。
中国・武漢市からの帰国者の受け入れ業務をしていた内閣官房の職員が2月1日に死亡した。国立保健医療科学院(埼玉県和光市)の敷地内にある7階建ての寄宿舎の近くで倒れているところを発見された。建物から飛び降りた可能性が高いとみられる。男性は警視庁から内閣官房に出向し、1月31日から泊まり込みで働いていたという。
不安が高まるいまこそ、政治には冷静な議論と、行政には問題点を率直に見直す姿勢が求められる。
(本誌・亀井洋志、池田正史、多田敏男)
※週刊朝日オンライン限定記事