もし、高齢ドライバー自身で運転が困難になってきたと感じたら、段階を踏むことが効果的だと岩越さんは助言する。

「まったく運転をしなくなるのではなく、『自分なりの限定免許』を作ることをお勧めします」

 視界が悪くなる夜は運転しない、地域の子どもの登下校時は近くを走行しないなど、時間帯や走行地域を制限し、徐々に運転量を減らしていけば、車がない生活への変化に戸惑うことも避けられる。

 運転のやめどきの指標となるのは、同会が推奨する「運転時認知障害早期発見チェックリスト30」(下記)だ。5項目以上当てはまった場合は、認知機能検査を受け、運転を制限し始めるといい。岩越さんはこう呼びかける。

「現状、運転をやめる人が増えるのは、大きな事故が起きたときだけ。報道が減れば、のど元過ぎれば熱さを忘れるように反省を忘れます。常日頃から安全運転への意識を持つことです」

(本誌・秦正理)

■運転時認知障害早期発見チェックリスト30

・車のキーや免許証などを探し回ることがある。
・今までできていたカーステレオやカーナビの操作ができなくなった。
・トリップメーターの戻し方や時計の合わせ方がわからなくなった。
・機器や装置(アクセル、ブレーキ、ウィンカーなど)の名前を思い出せないことがある。
・道路標識の意味が思い出せないことがある。
・スーパーなどの駐車場で自分の車を止めた位置がわからなくなることがある。
・何度も行っている場所への道順がすぐに思い出せないことがある。
・運転している途中で行き先を忘れてしまったことがある。
・よく通る道なのに曲がる場所を間違えることがある。
・車で出かけたのに他の交通手段で帰ってきたことがある。
・運転中にバックミラー(ルーム、サイド)をあまり見なくなった。
・アクセルとブレーキを間違えることがある。
・曲がる際にウィンカーを出し忘れることがある。
・反対車線を走ってしまった(走りそうになった)。
・右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった。
・気がつくと自分が先頭を走っていて、後ろに車列が連なっていることがよくある。
・車間距離を一定に保つことが苦手になった。
・高速道路を利用することが怖く(苦手に)なった。
・合流が怖く(苦手に)なった。
・車庫入れで壁やフェンスに車体をこすることが増えた。
・駐車場所のラインや、枠内に合わせて車を止めることが難しくなった。
・日時を間違えて目的地に行くことが多くなった。
・急発進や急ブレーキ、急ハンドルなど、運転が荒くなった(と言われるようになった)。
・交差点での右左折時に歩行者や自転車が急に現れて驚くことが多くなった。
・運転している時にミスをしたり危険な目にあったりすると頭の中が真っ白になる。
・好きだったドライブに行く回数が減った。
・同乗者と会話しながらの運転がしづらくなった。
・以前ほど車の汚れが気にならず、あまり洗車をしなくなった。
・運転自体に興味がなくなった。
・運転すると妙に疲れるようになった。
*日本認知症予防学会理事長、鳥取大学医学部教授 浦上克哉さん監修、NPO法人高齢者安全運転支援研究会提供

週刊朝日  2019年12月20日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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