プロトタイプは3年ほど前に製作。高齢ドライバーによる公道での実証実験も進んでおり、実用化されれば、現行の自動運転車よりも事故を大幅に減らせる可能性がありそうだ。

 今すぐにサポートを充実させたいという人には、自動車保険を活用する方法もある。あいおいニッセイ同和損保では、来年1月から「タフ・見守るクルマの保険プラス」という保険を開始する。契約者に貸し出したドライブレコーダーによって、「急加速や車線逸脱、指定区域外の走行などがあった場合にアラートを鳴らす」「定期的に運転診断レポートを提供する」「車に衝撃があった際には、24時間対応可能なオペレーターが安否確認のコールをする」といった従来のサービスに、自身の運転スコアに応じて保険料が割引される「運転特性割引」を追加したものだ。

 同社自動車保険部の梅田傑さんは言う。

「安全運転を心がけていただくには、運転診断レポートをいかに見てもらうかが大事だと考えています。スコアによって割引を受けられることが、運転技術向上へのモチベーションにもつながります」

“第三者の目”に運転を見てもらうことは、高齢者が自身の運転を振り返るのに大事なポイントだ。

「ご家族ではなく、第三者の目によっての診断ならば、素直に聞き入れられるというお客様もおられます」

 近しい人の助言に耳を傾けなかったことで、結果的に事故を招いた例として典型的なのが、前述の群馬県で起きた事故だろう。死亡したのは逆走した軽自動車を運転していた80歳男性。朝日新聞によると、男性は足も不自由だったことから親族や知人から運転免許返納を勧められていたが、「病院やスーパーに行くのに必要だ」と応じなかったという。

 高齢者安全運転支援研究会理事長の岩越和紀さんは、親族による指摘が返納につながらないことについて次のように分析する。

「普段からのコミュニケーションが足りていない場合が多いです。普段の会話がないのにいきなり注意しても、不快に思われて終わりです。安全に運転を継続できるかは、高齢者の技術だけでなく、家族との結びつきが問われていると言ってもいいかもしれません」

 セゾン自動車火災保険が8月、40~50代の男性300人に行ったインターネット調査では、高齢の親の運転に不安を感じても、今後の運転について話し合ったことがないとする人が約4割いた。不安を感じたことがない人に至っては、約7割が話し合ったことがなかった。

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