早稲田大のキャンパス(撮影/多田敏男)
早稲田大のキャンパス(撮影/多田敏男)
(週刊朝日2019年12月20日号より)
(週刊朝日2019年12月20日号より)

 今回、編集部では東進ハイスクールの協力のもと、早慶やMARCHなど各大学グループ内で、併願せずにその大学だけを受験した人の割合「グループ内専願率」(以下、専願率)を出した。例えば、「早慶」グループであれば、早稲田大だけを受験した人と慶應義塾大だけを受験した人、早慶を併願した人の合計を母数に、早稲田大だけ、慶應義塾大だけを受験した人の割合がそれぞれの大学の専願率となる。東進ハイスクールを運営するナガセの市村秀二広報部長は「選ばれる大学を見るための新たな指標となる」と見る。

【表】各大学グループ内の専願率や併願状況などのデータはこちら

 まず、永遠のライバルである早稲田大と慶應義塾大の専願率を見ていこう。早稲田大が55%、慶應義塾大が19.6%と早稲田のほうが圧倒的に高い。これまで本誌が報じてきたダブル合格の入学率(2019年11月29日号など)では、両方合格した場合に慶應義塾大を選ぶ割合が6割と早稲田大を上回っていたが、専願率という指標で見ると早稲田が「選ばれる大学」になっている。

 この逆転した数字をどう読み解くべきか。人気が高いのはもちろんのこと、背景には、入試方法の違いもある。早稲田大ではセンター利用入試を実施。この入試の志願者数は1万人を超え、地方の学生が東京に来ることなく入試を受けることができるメリットは大きい。こうした「受けやすさ」も選ばれる一つの理由といえそうだ。

 さらに、早稲田大はMARCHとの併願が多いことにも注目したい。早稲田大専願者のうち、MARCHを併願しているのは76.2%だった。他方で慶應義塾大は45%にとどまっている。早稲田大の文系学部は英語・国語・地歴公民の3科目でも受けられる。典型的な文系私大型の入試といえるだろう。

 他方、慶應義塾大は英語に加えて、小論文や数学などを課している文系学部もある。国公立大との併願の割合が高いのは慶應義塾大だ。私大専願者には対策が厳しい数学や小論文だが、国公立大受験者にとっては受けやすい。入試の違いは求める学生の違い。それが専願率にも出ているのだろう。

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら
次のページ