モーニング娘。’19=アップフロントワークス提供
モーニング娘。’19=アップフロントワークス提供

 メジャーデビュー20周年を超え、21年目の活動に突入しているアイドルグループのモーニング娘。’19。

 その活動はますます精力的で、オリコンのシングルトップ10獲得曲数は2位の嵐の56作、3位のSMAPとAKB48 の55作を引き離す67作品で歴代1位の記録を誇る。

 メンバーを入れ替えながら存続するアイドルグループのはしりとして、21年の間にさまざまな変化や進化を遂げてきた。

「もともとオーディション番組から始まったグループで、結成当初は素人ぽさもウリのひとつでした。夢を持つ素人の子たちが国民的アイドルになっていくというストーリーを楽しむことができたわけです。それがメンバーが入れ替わり、近年は生歌での歌唱力と高度なダンスパフォーマンスをウリにしたグループに変化しました。ある程度の実力を持った子たちが、さらに実力を磨いてみせていく。今ももちろんアイドルなのですが、アーティスト指向が高まったグループになっています。ナマで見ると、その迫力に圧倒されたり魅了されたりする人も多く、そのあたりが長く愛される理由のひとつだと思います」

 と言うのは、芸能評論家の三杉武さん。

「歴史と実力があり、ある意味、宝塚や劇団四季などにも通ずる、ひとつの“文化”として認められている部分もあるのではないでしょうか」

 今年の夏にはロックフェスに出演。40分間、MCや休憩なども挟まずにノンストップでのパフォーマンスを繰り広げ、ロックファンを驚かせた。「体力オバケ」という異名も一部で呼ばれるようにもなった。

「50代からのアイドル入門」の著者で書評家の大森望さんも、現在のモー娘。の魅力は、パフォーマンス力にあると語る。

「歌って踊るというアイドルの基本を忠実に守りつつ、それを高度なレベルで行う訓練をすごくしています。そんな体育会系的なきびしさも、魅力のひとつです」

 かつては「LOVEマシーン」がミリオンセラーを獲得し、彼女たちをテレビで見ない日はないほどだった。大森さんは言う。

「“モーニング娘。”というグループ名を知らない日本人はいないぐらい有名なのに、現役メンバー個人の名前を言える人は、ファン以外はかなり少ない。グループ全体の個性は保ちながら中身がどんどん入れ替わる、いわば“動的平衡”アイドルなんです。だからファンは、グループの歴史だったり運営方針だったり、アイドルとしての哲学を応援する。高校野球プロ野球チームの応援にも通じる部分がありますね。近年はテレビにもあまり出ないので、今のモーニング娘。を見たことがない人も多い。だからこそ、ロックフェスなどで初めて実物を見て、みんなが知っている昔懐かしい曲の一方で、今のアイドル曲の流行とは全然違う、歌いながら激しく踊る個性が強い最近の曲に触れて『なんだこれは!?』と衝撃を受け、ハマッていくんです」

 女性ファンの多さも近年のモーニング娘。の特徴のひとつだ。

「ただカワイかったり素人ぽい子たちが集まっているだけでは、女性にはあまり響きません。自分にはない美しさや、自分にはできない高度な歌やダンス、そこに努力して到達した人たちというところを尊敬して応援する感覚が強いようです。また、つんく♂さんの作る曲も、女性目線のものが多く、最近では人生を歌うようなものが増えているのも女性が共感しやすいのではないでしょうか」

 高度な進化と老舗としての看板の知名度の高さの両立で、ますます濃いファンは増えていきそうだ。(本誌・太田サトル)

※週刊朝日オンライン限定記事