「放射線治療では、先進治療として陽子線や重粒子線治療もおこなわれています。ただグリオーマに対しては、これらが通常の放射線治療以上に効果があるかどうかは、まだ明らかになっていません」(成田医師)

 さらに薬物治療では、放射線治療と並行してテモゾロミドや分子標的薬アバスチン(ベバシズマブ)などの内服が標準治療となる。

 またグリオーマに対しては、新しい治療方法や治験も複数おこなわれている。

 一つは、アメリカで開発されたオプチューン(交流電場腫瘍治療システム)療法だ。頭部に電極のシートを貼り、1日に18時間電気を流すことで腫瘍細胞の増殖を抑制するという。標準治療終了後に再発した膠芽腫の患者に対する治療で、日本では18年から保険適用になっている。

 治験段階のものでは、放射線治療の一種のBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)がある。これは放射性化合物であるホウ素製剤を注射して腫瘍細胞に集積させ、中性子を照射して腫瘍細胞のみを殺すという方法だ。さらに膠芽腫の患者を対象に、腫瘍細胞のみで増殖するウイルスによって、正常細胞を傷つけずに腫瘍細胞を破壊するというウイルス療法の治験も進んでいる。

 近年では、薬物治療が有効で長期間再発もなく、元気に暮らす膠芽腫の患者も出てきているという。今後遺伝子診断などにより、さらに効果的な薬剤や治療方法の開発が期待されている。(文/ライター・梶葉子)

■脳腫瘍 データ
推定患者数:悪性脳腫瘍 約6000人。転移性脳腫瘍 約10万人
かかりやすい性別:種類によって異なる。髄膜腫は中年以降の女性に多く、膠芽腫は中年以降の男性に多い
かかりやすい年代:子どもから大人まで。脳腫瘍の種類によって発生しやすい年代が異なる
主な診療科:脳神経外科、神経内科
主な症状:できた場所による。片側の手足や顔面の痺れ・麻痺、けいれん発作(てんかん)、ふらつき、言葉が出てこない、視野が欠ける、頭痛・吐き気など
主な治療法:手術、放射線治療、薬物治療

週刊朝日  2019年10月4日号