「汚泥を浚渫(しゅんせつ)したり、きれいな砂を敷き詰めたりして一刻も早くお台場を泳げる海にすることが必要です。東京大会のレガシー(遺産)にもなります」

 世界の下水道事情に詳しい、国連環境アドバイザーでグローバルウォータ・ジャパン代表の吉村和就さんは具体策を提言する。

「隣接する有明水再生センターから放流管を300メートル延長し、処理水をお台場に放流する。計算上は34日できれいな水に入れ替わります。基準を超える高温化が懸念される水温の低下にもつながります」

 吉村さんは榎本さん、メーカーとも連携し、実際に都に提案をしているという。

 組織委は汚水をブロックする方策として、大会時にポリエステル製の水中スクリーンを3重に設置する方針を示している。

「水中スクリーンを設置することで大腸菌類の流入抑制について高い効果が認められています。来年の本大会においては、万全な体制で臨みたいと考えています」(組織委担当者)

 直ちに水質改善策に取り組んでほしいものだ。

■熱中症でテスト大会は深刻な事態に

 今夏の五輪テスト大会で選手たちは猛暑に苦しんだ。

 8月11日に海の森水上競技場で開かれたボート。照りつける日差しとじっとりとした湿気で、熱中症のような症状になる選手が相次いだ。都内臨海部の最高気温は34度を超えていた。英男子選手はぐったりとした様子で、その後担架で運ばれた。表彰式中にふらついている選手もいたという。大会関係者は、

「熱中症の規模としては大きく深刻だ」

 と危機感をあらわにしていた。

 同日、お台場海浜公園でのOWSは開始2時間前の水温が29.9度。レース実施の上限である31度を下回ったとはいえ、選手からは「通常の23、24度に比べると息苦しいし、脱水してしまいそうで心配」などの声が上がった。4日後、同じ会場のトライアスロン女子ではランを通常の半分の5キロで実施。それでも、仏選手が熱中症の疑いで救急車で運ばれた。

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