東海林:ぼくの考えは明確です。鯨食について、あまりに世間が非難するならば、食べなくてもいいよ。でも、鯨のようなおいしい食べ物は、どんどん食べたいな、という(笑)。

小泉:おもしろい話があります。IWCの総会で、日本の鯨料理屋さんが出向いて、鯨料理を反捕鯨国の人たちに出すと、「おいしい」とパクパク食べたのです。でも、会議になると、捕鯨はダメだ、と。

東海林:反捕鯨国の反対理由は、動物愛護という精神的な問題なんですね。「地球上で最も大きい神聖な生き物を食べるのは野蛮だ」と。では、牛や豚はいいのかという、倫理観の問題になる。

小泉:反捕鯨国は、牛や豚は家畜だが鯨は自然の生き物だ、という。実は、強権的な反捕鯨国は、米・豪・ニュージーランドなど牛肉の輸出大国です。

東海林:鯨は良質のたんぱく質ですから、鯨肉が広がると……。

小泉:牛肉の輸出量に影響が出るのでは。また、環境面で言えば、牛は反芻(はんすう)動物ですからゲップをします。

東海林:メタンガスね。

小泉:環境への影響は地球温暖化の原因となる温室効果ガスで、二酸化炭素の17倍です。

■アミノ酸物質のバレニンに注目

東海林:畜産は土地、餌などの飼育代とお金がかかるが、鯨は、餌は勝手に食べるし、土地代も要らない。巨体で肉も大量に取れるし、経済効率がいい。脂の質もいいですよね。

小泉:赤身の鯨肉は、牛肉に比べて脂質が少ない。鯨の脂は、不飽和脂肪酸で血液をサラサラにするエイコサペンタエン酸(EPA)や脳を活性化するドコサヘキサエン酸(DHA)が豊富に含まれています。

東海林:もともと欧米の捕鯨は、鯨の脂が目的でした。ろうそくの原料に使ったり、灯や機械の燃料油にしたり。

小泉:江戸時代、米国のペリーが来航したのも、捕鯨船の燃料や食料補給が目的でした。米国の捕鯨船は、鯨肉を煮出して油だけ取ると、鯨肉は全て捨てていたのです。

 しかし、米国で油田が発見されたことで、石油が鯨油に取って代わり、捕鯨から撤退しました。もともとIWCは、「鯨を持続的に利用する」という目的で設立されたのに、石油が燃料として確立すると、保護団体の色合いを次第に強めていったのです。

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