

漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「なつぞら」(NHK総合 月~土曜8:00~ほか)をウォッチした。
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北海道から東京へ舞台を移した朝ドラ。いよいよヒロイン・なつ(広瀬すず)も、酪農業からアニメーターへジョブチェンジ?
そんな時に今さら気になる、なつがアニメーターを目指す動機。そりゃ、幼い頃に教室で漫画映画を見て、感動してましたよ。
ノートの端っこにパラパラ漫画も描いた。草原にイーゼル立てて、写生もした。アニメスタジオも見学した。
でも、アニメーターという職業がポピュラーではなかった時代に、見る側から作る側へ向かうって、相当なエネルギーと情熱が必要なんじゃないのかと。
それなのにディズニー映画「ファンタジア」を見ている時のなつの顔。キラキラ~ワクワク~瞳孔全開かと思いきや。これが薄目なんです。暗闇の中、鮮やかに浮かび上がるスクリーンを眺めながら。なつよ、なぜ薄目なのだ。
まぁ学生演劇でヒロインも務めた彼女だ。その薄目は「大好きなアニメを見られて幸せ!」て、薄目なのかもしれない。しかし納得いかんのじゃああっと、私の中の泰樹じいちゃん(草刈正雄)が叫ぶのだ。
そんなモヤモヤを抱えつつも、なつがじいちゃんに東京行きの理由を明かした時、ハッとなったわけです。
「じいちゃんが一人で北海道に来て開拓したみたいに、私も挑戦したい。私、じいちゃんみたいになりたかったんだ。それが私には漫画映画を目指すことなのさ」
すると、じいちゃんは叫ぶ。「行って来い。行って、東京を耕して来い。開拓して来いー!」
開拓。なつがしたいことは開拓だ。絵コンテとかセル画とか、こまけぇことはいいんだよ。とにかく、アニメ業界というまっさらな大地に、なつはクワをぶっこみたいのだ。
そんななつの思惑を読むかのごとく、東京のマダム・前島光子(比嘉愛未)もいきなりこんな発言。
「この新宿も、開拓者が集まる所なのよ。文化の開拓者。ある意味、北海道と同じように。ようこそ、開拓者の街へ」と、新宿と北海道を無理矢理結びつけちゃう、合言葉は「開拓」!
なんだったら、ドラマタイトルも「なつぞら」より「かいたく」がいいんじゃないかと、優しいあの子に伝えたい。昭和、平成、令和と連なる時代の中。なつよ、お前が耕すアニメという畑、とんでもないお宝が埋まっているぞ。
※週刊朝日 2019年6月7日号