東京医療センター 泌尿器科医長 斉藤史郎医師(左)/虎の門病院 放射線治療科部長 小塚拓洋医師(右)
東京医療センター 泌尿器科医長 斉藤史郎医師(左)/虎の門病院 放射線治療科部長 小塚拓洋医師(右)
LDRのイメージ図 (週刊朝日2019年4月19日号より)
LDRのイメージ図 (週刊朝日2019年4月19日号より)
前立腺がん データ (週刊朝日2019年4月19日号より)
前立腺がん データ (週刊朝日2019年4月19日号より)

 前立腺がん治療では、放射線治療は根治療法という位置づけで、単独でも用いられる。直腸や膀胱といった周囲の臓器へのダメージを軽減し、合併症のリスクを減らす照射法が主流になってきている。

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 前立腺がんの治療には、手術、放射線治療、ホルモン療法などがある。多くのがんで放射線治療は手術の補助的な役割と考えられがちだが、前立腺がんでは、手術と同じウェートを占め、根治療法として単独でもおこなわれる。

 前立腺がんの放射線治療には大きく分けて、からだの外から放射線を当てる「外部照射療法」、放射線を発する物質を前立腺の内部に留置する「組織内照射療法」がある。2018年には重粒子線や陽子線などを照射する外部照射の一つ「粒子線治療」も保険適用になった。

 通常の外部照射、組織内照射はいずれも低リスク(がん細胞の数が少なく悪性度が低い)~高リスク(がん細胞の数が多く悪性度が高い)群で用いられ、粒子線治療は高リスク群がよい対象になる。

 東京医療センター泌尿器科医長の斉藤史郎医師は次のように話す。

「とくに低リスク群では、手術、外部照射、密封小線源療法(LDR、後述)、どれも治療成績は同じであることが明らかになっており、すべてが第一選択といえるでしょう」

 また、高リスク群では、手術での再発率が40~60%なのに比べて、外部照射とLDRの併用療法では30%以下に抑えられるなど、最近ではリスクの高いものでも、よい成績をおさめているという。

 放射線治療で課題になるのは、正常な組織にも放射線が当たり、機能低下や出血などを起こす合併症のリスクがあることだ。手術では術後すぐに合併症が起こるのに対して、放射線治療では治療中~治療後数カ月以内に起こる「急性期合併症」と、1年~数年後に起こる「晩期合併症」があるのも特徴的だ。

 前立腺がんの外部照射の場合も、前立腺に接する直腸や膀胱などに当たる放射線量を、いかに減らせるかがポイントになる。

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