作中では年末恒例のNHK紅白歌合戦が例に出され、まず先に価値のある人がいるのではなく、大衆が価値を選び出す側面があることが示唆される。
この問題に対し、個人はどう対応するべきなのか。
「私自身としては、自分の見てほしい部分、価値を感じる部分を発信していくことで、初めて生まれる本物があると思います」
それはひいては、自身の才能の発見にもつながるという。歩とジョージは、経営するファッションブランドの立て直しに着手する。だが、最初はなかなかうまくいかない。それは、自分たちの武器がどこにあるかがわからないことが大きかった。
しかし、ジョージは物語の後半で、自分の恵まれた容姿を武器として使えるようになっていき、歩もジョージに続く。それは彼らにとっての、新たな世界の始まりでもあった。
「自分の資質を見極められた時、これまでと全く違った自分が出てくる。才能って、何も考えずに使うこともあるけど、自分で売り方を考えることによって顕現するものでもあると思います。読者の方々も、自分の価値を他人に委ねず、“自分の考える自分”を尊重していっていただければいいと思います」
(若林良)
※週刊朝日 2019年4月12日号