採点システムのトラブルで対応に追われる国際スケート連盟関係者ら(c)朝日新聞社(写真はイメージ)
採点システムのトラブルで対応に追われる国際スケート連盟関係者ら(c)朝日新聞社(写真はイメージ)

 5年ぶりの日本開催となったフィギュアスケートの世界選手権は、連日公式練習から満員状態で、改めて人気の高さが証明された。
 そのフィギュアスケートの採点に人工知能(AI)を導入すべきだという声が最近、ファンの間で高まってきている。裏を返せば、現状への不満の表れともいえる。

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 週刊朝日が世界選手権を前に2月に実施したファンアンケートでも、自由意見の回答欄でジャッジに関する要望が目立った。「誰が採点するかで点数が大きく変わるのであればスポーツと言いがたい」「判定が統一されていないと感じる」といった声だ。

 今、ファンの間で問題となっているのは「ごまかしジャンプ」の存在だ。離氷時に4分の1回転ほどする「プレローテーションジャンプ」と呼ばれるもので、減点の対象として判定すべきだという声は多い。「跳んでから回転する選手からすれば許せないと思う」(アンケートから)。つまり、ジャンプの回転不足について、着氷時だけでなく離氷時のスケート靴のエッジなどもしっかり確認を、という主張だ。

 技術の正確な測定については、機械の力を借りれば、誤審は少なくなるだろう。例えば、同じ採点競技である体操では、国際体操連盟が、富士通が開発するITを活用した採点支援システムの導入を進めている。3Dレーザーセンサーを用いて、さまざまな角度から選手の技の完成度を評価。数値で判断できる領域にITを活用するという。

 難しいのは、技術の出来栄え点(GOE)や演技構成点(PCS)など芸術面の採点。今はジャッジの心証に左右されている、滑走順で印象が変わる、とファンはいぶかっているのだ。フィギュアスケートへのAI導入の是非について、解説者の佐野稔さんはこう話す。

「シーズンを通して演技を全て記録、分析、比較した上での判定ができれば、面白いかもしれない。ただ、人間の感情をどこまで読み取れるかどうか」

 例えば、スケーターの目の輝きなどをどう評価するのか。充実して滑っているのか気落ちして滑っているのかをどう判断するのか。

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