「実は私も、がん治療の最先端を行く病院の内科医だったころ、見落としたことがあるんです。その時は幸い、患者さんが院内の口腔外科をまわった時に、舌がんと診断され、助かりました。歯科医は普段、がんなんて診ないし、一般の人も口内炎だとほっておくことが多いですからね」

 堀の場合、2016年3月ごろ、リウマチを発症し、治療薬を飲んでいた。

「リウマチの治療薬であるメトトレキサートで口内炎ができることはよく知られており、歯科医が疑わなかったのはやむを得なかった面があります。舌がんは進行が早いのが特徴。たぶん、堀さんは最初のころは痛みがなかったはず。口内炎は痛みがありますが、舌がんの初期は痛みがない。入念に聴いていって、疑えばわかったはずですが……」

 堀は22日に手術を受けた。今後治療はどうなるのか。

「簡単ではないでしょう。ただし、左舌扁平上皮がんは、放射線治療や抗がん剤によく反応するので、乳がん膵臓がんよりも生存率が高い。さらに、昨年ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑さんの研究が基礎になった『オプジーボ』という抗がん剤が効くのがわかっています」

 再びファンの前で歌声を披露してほしい。(本誌・上田耕司)

週刊朝日  2019年3月8日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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