菅野は18年の沢村賞の選考基準をすべてクリアした。(1)25試合登板(2)10完投(3)15勝(4)勝率6割(5)投球回200イニング(6)150奪三振(7)防御率2.50以下──。シーズン27~28試合の登板の中でこれを満たすには平均7回以上を投げなければならない。素晴らしいよね。特に、打者の技術向上が目立つ中、そして各打者にパワーがついている現代野球でこの完投数は恐れ入る。

 11月23日の名球会総会でも投手の入会資格について話し合った。

 150勝まで落とせばいいのか、ホールドも基準の中に加えるべきなのか。ただ、勝利と試合を締めくくるセーブを同じ価値として合算はできないし、セーブとホールドを同列に見ることも難しいのは事実だ。

 菅野のように、一人で勝敗が決するまで投げての1勝を見てしまうと、その「1勝」の価値は絶対に他の数字と一緒ではないと感じてしまう。これは中継ぎや抑え投手の価値が低いということを論じているわけではない。だからこそ、名球会会員の誰もが頭を悩ませている。

 話を戻すが、菅野が圧倒的な存在となればなるほど、他球団の対策をしっかりと見ていきたい。もし菅野が物足りなく感じたら、本当にメジャー移籍を要望してしまう。

週刊朝日  2019年1月4‐11日合併号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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