※写真はイメージです
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介護職の採用が困難である要因(週刊朝日 2018年8月17-24日合併号より)
介護職の採用が困難である要因(週刊朝日 2018年8月17-24日合併号より)

「渡る世間に鬼はなし」というが、高齢者ホームには鬼と仏が存在するという。集団行動だった小・中学校時代、上司の命令に背けなかった会社員時代と、今まで幾多の社会を見てきたあなた。しかし、施設はこれまでとひと味違った世界なのだ。ここでの世渡り術を覚えておいて、損はない。

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 しかし、「施設に入ってまで気を使いたくない」と感じる人もいるかもしれない。だが限度を超えると最悪な場合、退去を求められることもある。その境界線は、「職員を退職に追い込むかどうか」だと、近著に『誰も書かなかった老人ホーム』があり、長年介護職員や管理者として勤務経験がある小嶋勝利さんは話す。

「人手不足の介護業界では、入居者を集めるよりも職員を確保するほうが難しい。暴力や暴言、他の入居者に迷惑をかけるなど過度に職員を困らせて退職に追い込むまでいくと、退去を求められることもあるのです」

 退去までいかなくても、ある入居者に対して苦手意識を持つ職員が増えると、施設全体の職員の数はいるのにその入居者に対応できる職員がいないという状況に陥ってしまう。

 このように介護職の人手不足は、入居者の生活と無関係ではない。介護労働安定センターの「介護労働実態調査」(2017年度)によると、介護事業所のうち66.6%が従業員不足と回答しており、不足している理由は「採用が困難である」が88.5%に上る。離職率の高さも顕著だ。

 人材確保のために、資格のない職員を採用するケースもある。スキルアップを目指して介護福祉士などの資格を取得する意識の高い職員もいる一方、他業種を転々として結果的に介護職に流れ着いたという人も多い。介護職員の質にむらがあるのが実情だ。介護職員も人間。必ずしも人格者であるわけではないので、過度な期待はしないでほしいと小嶋さんは話す。

「介護職というと相手の意図をくみ取って動いてくれる人をイメージするかもしれませんが、実際はコミュニケーションが苦手な職員も多いのです」

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