イラスト/CHARAPHIC LAB Co. Ltd.
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「がんが治ると言われたのに、再発した」「ステージIVと言われた。もうなすすべがない」。医師からのこうした言葉にショックを受けた、というがん患者の話をよく聞きます。しかし、言葉の意図を医師に確認すると「そんなことは言っていません」ということが多いのも事実です。患者の理解が不足する背景には、医師とのコミュニケーションが不十分で「がん用語」に対する誤解を是正できないことがあります。好評発売中の週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」では、がん患者や家族が誤解しがちな代表的ながん用語について、専門家に正しい意味を解説してもらっています。ここでは、「標準治療」について紹介します。

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「患者さんからもよく『標準治療はいい治療ではなく、平凡な治療なんでしょう?』と聞かれます。しかし、それは誤解で、正しくは科学的根拠によって証明された安全かつ、現段階で最も効果が期待できる治療です」(東京女子医科大学病院がんセンター長の林和彦医師)

 林医師によれば、標準治療という言葉は臨床研究に使われていた専門用語の「スタンダードセラピー」からきています。この言葉が専門外の人にも使われるようになったことが、誤解を招く一因になったと考えられるそうです。

「ネットなどで『標準治療』と書かれている場合、『一般的に広くおこなわれている』というニュアンスで使われていることも少なくありません。こうした情報を利用する場合は注意する必要があります」(帝京大学病院腫瘍内科准教授の渡邊清高医師)

■信頼できる研究が根拠

 標準治療は、信頼できるエビデンスレベルの高い臨床研究をもとにした根拠のある治療です。同じ状況の患者に対しておこなわれた有効性や安全性について、国内外の多数の研究を専門家たちが検証したうえで、標準治療として認められます。

 標準治療は関連学会などが作る「ガイドライン(診療ガイドライン)」に掲載されています。ガイドラインはどの医療機関でも質の高いがん診療が受けられるよう、医師などの医療者向けに作成されたもので、「肺癌診療ガイドライン」(日本肺癌学会)など各種がんのガイドラインのほか、薬物療法や疼痛治療など治療に特化したガイドラインなどさまざまなものがあります。最近は患者向けのわかりやすいガイドラインも登場してきました。

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標準治療以外の方法がいい場合とは