なお、ガイドラインは定期的に新しいものに改訂されます。改訂後に標準治療を変えうるような新しい臨床試験の結果が出た場合には、随時、公表されます。

「体力が低下している場合などでは、副作用が強く出ることが多く、標準治療以外の方法がいいと思われる場合もあります。標準治療に比べて効果が少し劣るものの、からだにやさしい治療などが相当します。実際の治療では、医師はガイドラインを参考に患者さんの状態や要望を総合的に判断して治療方針を決めていきます」(林医師)

「標準治療以外の治療を提案された場合は、なぜその治療がいいのか、治療を受けることのメリットとデメリットについて主治医によく確認しましょう。必要に応じてセカンドオピニオンなども得ることが大事だと思います」(渡邊医師)

■先進医療を検討するには

 また、がん治療の中でも特に手術療法などの外科治療は医師による技量や経験、病院の態勢による違いがあります。たとえ標準治療でも難度の高いものについては、その手術の経験が豊富な医師や病院を選ぶことも大事です。

 標準治療は、原則的に公的医療保険が適用されます。また、厚生労働省が定める先進医療は自費診療部分と保険診療との併用が認められています。しかし、先進医療は現時点では標準治療ではありません。

「有効性や安全性について一定の基準をみたしているものの、検証中の治療です。将来、保険適用されるものもあれば、効果が検証できないものもあります」(同)

 では先進医療を選択するのは、どのようなケースでしょうか。

「希少がんなどで十分な根拠がなく、標準治療が確立していない場合や標準治療で効果が乏しい場合、強い副作用が出てしまう場合が考えられます。このようなケースでも、まずは標準治療の考え方が適用できるかどうか、主治医と十分に検討しましょう」(同)

◯取材協力
東京女子医科大学病院がんセンター長化学療法・緩和ケア科教授
林 和彦医師

帝京大学病院腫瘍内科准教授
渡邊清高医師

(文/狩生聖子)

※週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」から抜粋