詳しくは書けないが、この映画で僕が強く共感した部分がある。僕の祖母は明治生まれで、関東大震災経験者である。戦争も経験している。僕が子供の頃によく関東大震災の揺れがどのくらいだったかを再現してくれた。戦争の時にどんな状況でどんな気持ちで逃げていたかと興奮して話してくれた。そして「未来のミライ」を見て思った。祖母が関東大震災でも戦争でも生き抜いてくれたから今の自分がいるんだよなと。あの時、祖母が生き抜いてなければ僕もそうだが父も存在してない。自分たちの先祖が頑張って生き抜いてくれたから、自分がいる。当たり前だ。だけど当たり前すぎてそんなことに強く感謝することがなかった。よく「ご先祖様に感謝しなさい」とは言われてきたが、ご先祖様が「生き抜いてくれたから」自分がいるんだと、だから感謝するのだと、当たり前だけど見過ごしていたことに気づかされる。

 子供にとって夏に何を見るかも大事だが、戦争の特集などがたくさん組まれるこの夏に、大人が見る意味がとてもある作品だと思った。ご先祖様、ありがとう。

週刊朝日  2018年8月10日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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