清家篤(せいけ・あつし)/1954年生まれ。78年、慶応義塾大学経済学部卒業後、同商学部助手、助教授を経て92年から同教授。2007年に同商学部長、09年から慶応義塾長。18年4月から現職
清家篤(せいけ・あつし)/1954年生まれ。78年、慶応義塾大学経済学部卒業後、同商学部助手、助教授を経て92年から同教授。2007年に同商学部長、09年から慶応義塾長。18年4月から現職

 深刻化する人材不足には、多様な人材の活躍が欠かせない。中でも注目されるのは、高齢者の活躍だ。労働経済学者、日本私立学校振興・共済事業団理事長の清家篤氏がその可能性について語る。

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 人口の減少に伴って、このままでは日本の労働力人口は減っていきます。そこで期待されるのが高齢者です。高齢者を活用することに企業として合理性があるし、高齢者にも支え手になってもらわないと日本の経済社会全体も立ち行かなくなります。

 そのためにも、働く意思と仕事能力があれば年齢に関わりなく働き続けられる「生涯現役社会」を実現させる必要があります。

 と言っても、ステップ・バイ・ステップ、まずは「65歳定年」を実現させたい。厚生年金の支給開始年齢が65歳に引き上げられるからです。就労と年金を接続させることは社会として必須です。2025年度には男性の支給開始が65歳になりますから、それまでに定年を引き上げなければなりません。

 そこから先は企業の個別事情によります。さらに定年を引き上げる企業があってもいいし、65歳以降は再雇用に移る企業があってもいい。また、高齢者自身がフリーランスとして新しい働き方を始めてもいいと思います。

 当面の心配は団塊の世代がすべて後期高齢者になる「2025年問題」です。今は前期高齢者と後期高齢者の割合は「1対1」ですが、そのころには「1対1.5」になってしまいます。元気な高齢者に社会を支えてもらうためにも、定年の引き上げと合わせて少なくとも70歳までは現役として働ける仕組みを整備したいものです。

 生涯現役社会は、個人、企業、社会どれにとっても必要なものです。

 個人にとっては、寿命が延びるのに合わせて職業寿命も延びていかないと、充実した豊かな生活を送れなくなってしまいます。企業にとっては、元気で能力がある高齢者を活用できないと、今後少なくなっていく若い人たちを奪い合うことになります。

 そして社会にとっては、支え手に回る高齢者が増えることによって、1人当たりの社会保障負担は少なくて済みます。とりわけ若い人たちが楽になります。

 個人・企業・社会、生涯現役社会は「三方よし」をもたらしてくれるのです。

週刊朝日 2018年7月20日号