室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
(c)小田原ドラゴン
(c)小田原ドラゴン

 米朝首脳会談後のトランプ大統領の発言、そして安倍首相の会見。作家・室井佑月氏は、首相の考えに疑問を呈する。

【この記事のイラストはこちら】

*  *  *
 
 6月6日、安倍首相は、米国大統領のトランプさんに会いに出かけた。12日の米朝首脳会談で、この国の拉致問題を提起するよう、安倍さんは、改めてトランプさんにお願いにいったのだった。

 会談の後の共同記者会見で、トランプさんは、拉致問題について、確実に議題にあげる、そう約束をしてくれた。しかし、安倍首相がいる前で、堂々とこんなことも述べていた。

「安倍首相は先ほど、軍用機や航空機、それに農産物など数十億ドルに及ぶ製品を購入すると話した」

 このことについて、麻生財務大臣がこういった(8日のTBSニュースより)。

「向こう(米国)から出てきた要求の書類の内容を見た? “なんだいこりゃ、ふざけているのかね”と思うほどだった」

 あの金満ぶりの激しい麻生大臣が、ふざけているって、どれほどのものなのか。

 恐ろしいけど、知っておきたい。でも、メディアはここをいじらない。上っ面の報道ばかりで。

 安倍さんがトランプさんに拉致被害者のことをお願いしにいったって、ただそのままじゃ。

 麻生さんが「向こうから出てきた要求の書類の内容を見た?」といっているんだから、見てないなら「見せてください」といって、その内容を報じるべきじゃね?

 くり返し流れるのは、安倍首相が会見で、

「日米の長い歴史の中で、今ほど同盟の絆が強いときはない」

 そう胸を張っていっているとこ。

 絆の強いお友達は、ちょっと動くだけで、とんでもない見返りを求めてくるのですね。

 そのことを伝えてこそ、この国の現状が見えてくると思うんだけど。

 あたしは安倍さんの今回の動きだって、権力の私物化じゃないかと思う。外交の安倍(マスコミが作ったイメージだけど)として、「米朝会談、蚊帳の外」といわれるのが屈辱だった。モリカケ問題の失態を、外交で一気に取り返したいこともあったろう。だからお土産をもって、トランプさんに会ってもらった。お土産とはうちらの財産。安倍さんの動きは、本当に国益にかなったものなのか?

著者プロフィールを見る
室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

室井佑月の記事一覧はこちら
次のページ