「上出来ですよ。キャンプのころは試合で投げられるとは思わなかったですから。12年ぶりにオールスター出場なんて可能性も十分出てきましたね。工藤(公康)、緒方(孝市)両監督の口ぶりからすれば、少なくとも監督推薦で選ばれるはず」
5月20日、6回3安打1失点7奪三振で2勝目を挙げた松坂大輔(37)について、中日を取材するベテラン記者はこう語った。
しかし、評論家からは辛口の言葉が……。
「野村克也さんなんか『とてもじゃないが調子は良くない』なんて言ってて、5試合26回3分の1を投げて17個もある四死球の多さを問題視してますよね」(スポーツ紙デスク)
ではなぜ勝てるのか。
「『カットボールだけはいい』と言われ、コントロールはアバウトだから技巧派になったわけでもない。スコアラーが『ピンチの場面になると投げミスしない』と言ってました」(前出記者)
松坂より速くて勢いのある球を投げている若手投手はたくさんいる。しかし、四死球を出すと自分を追い込み、威力のない球を投げて打たれてしまう。松坂はピンチのピッチングにならない、というのだ。
松坂が登板している試合では、こんな場面があるという。
「ベンチに戻ってきたところで年下のコーチが『どうしますか?』と、まだ投げるか否か聞きたくて声を掛けると、松坂は聞こえないフリをするそうです(笑)。で、コーチは、いいんだな、と忖度し、次の回も松坂がマウンドに向かう。故障してずいぶん苦労してきたのに、今でも投げたがりなんですよ」(前出デスク)
前出の記者は「松坂は『肩は消耗品』だとか、賢いことを言わない(笑)。高校野球で誰もが知る存在になったわけですが、当時から損得勘定なく投げまくる気合と根性ってタイプの選手で、だからこそ皆が覚えているドラマチックなシーンが生まれた。そんなところが日本人の心をくすぐるんですよ」と言う。
オールスターに出場すれば、松坂との対決を期待されるのは、間違いなく清宮幸太郎(日本ハム)。